インタビュー特集 ~自分らしく暮らす~ Good Life for Person with Dementia 認知症の人が住みなれた地域で自分らしく暮らすことができる社会へ

第5回 認知症になった私が伝えたいこと

自分が認知症だとわかったとき、そこからの人生をどう捉えていけばいいのでしょうか。認知症になっても希望を持って生きている方がいらっしゃいます。認知症と診断され、一度は絶望をしながらも希望の光を見つけて力強く歩まれている佐藤雅彦さんの著書から、メッセージをご紹介します。

認知症になったら、できなくなることも多いですが、できることもたくさんあります

トピック1 ご本人へ 残されている自分の能力を信じましょう。認知症になっても、人生をあきらめないで。

自分が認知症ではないかと不安を感じている人。
診断を受けてこの先どうしたらいいか光が見えない人。
不便や不自由が増えてストレスでいっぱいの人。
他人の手を借りて日々を送っている人。
いま、たくさんの本人がこの時を過ごしていると思います。
一日一日、そしてこれからの自分の人生を、ともに有意義に生きていこうではありませんか。
失った機能を悩んだり、嘆いたりするのではなく、残されている自分の能力を信じましょう。
認知症になっても、楽しみや張り合いのある暮らしを送ることができます。絶望することなく、希望を持ちましょう。
できないことが多くなっても、自分は自分です。認知症になったからこそ、他人を気にせず、他人と比較することなく、自分の好きなことに時間を使いましょう。
一人でがんばらず、同じ病気を持ちながら暮らしている仲間とつながりましょう。自分の住む地域で見つからなければ、認知症当事者の会「3つの会」に連絡をください。
そして、勇気を持って、自分が感じていること、思っていることを、まわりの人に伝えていきましょう。
本人が発言していくことで、認知症に対する誤解や偏見をなくし、世の中を変えることができるはずです。
認知症になっても、人生をあきらめないで。
私も、あきらめません。

トピック2 ご家族へ 家族の意向だけで物事が決められていくことがあります。どうか本人の話を聞いてください。

本人の意思が無視され、家族の意向だけで物事が決められていくことがあります。
本人は、何も考えていないのではなく、すぐに判断したり、すぐに言葉にしたりすることができないだけなのです。
記憶障害のために、同じことを何度も言ったり、何度も聞いたりするかもしれませんが、どうか本人の話を聞いてください。
本人は、家族に世話をかけていることに、負い目を持っています。もし家事などで、ちょっとした手伝いができるなら、役割を与えてください。そうすれば、自分が役に立っていることが実感でき、自信が生まれます。
何もしないと症状は早く進みますが、こうすることで、進行を遅らせる効果もあるのではないでしょうか。
本人は、家族が介護で疲れきってしまうようなことを、望んではいません。
ショートステイなどの地域資源を使って、ぜひ自分のための時間を持ってください。
介護に関し、さまざまな情報が耳に入ってくるかもしれませんが、認知症の人は一人ひとり違いますから、それらがすべて正しいとは限りません。
人の意見は、あくまでも参考意見です。そのとおりにできていなくても、自分を責めないでください。
本人だけでなく、家族も孤立しがちだと思います。
本人を一人でおいていけないから、地域の家族会などには出られないという人も、少なくないでしょう。
でも、家族会には同じような境遇の人たちが集まっています。参加すれば、多くの悩みを分かち合うことができると思います。

トピック3 すべての人へ 認知症になっても幸せに暮らせる社会を一緒につくっていこうではありませんか。

認知症になりたくてなる人はいません。
認知症になって、自分の生活、そして人生が大きく変わりました。
認知症になることは残念なことですが、けっして不幸なことではありません。
認知症になったら、できなくなることも多いですが、できることもたくさんあります。
本人は、何も考えられない人ではなく、豊かな精神活動を営むことができる人です。
本人は、医療や介護の対象だけの存在ではなく、どんなときでもかけがえのない自分の人生を生きている主人公です。
本人は、自分のやりたいことや、自分のできる仕事、ボランティアなどをつうじて世の中に貢献できる、社会の一員です。
認知症の人たちは、社会の「お荷物」的な存在ではなく、老いたり、生活が不自由になったりしても、だれもが自分らしく堂々と暮らしていける新しい世の中を、身をもってつくりだしている人たちです。
いま、認知症とともに生きている多くの人たち、そして、これから認知症になるかもしれない無数の人たちが、認知症になっても幸せに暮らせる社会を、一緒につくっていこうではありませんか。
人間の価値は、「これができる」「あれができる」という有用性で決定されるのではありません。何もできなくても、尊い存在なのです。
私は、これからも広く、認知症の人はこういうふうに考えているのだということを、社会に向けて訴えていきたいと思います。

佐藤 雅彦 さん認知症当事者の会「3つの会」代表、「日本認知症ワーキンググループ」共同代表

1954年、岐阜県生まれ。システムエンジニアとして働いていた51歳のときにアルツハイマー型認知症と診断され、退職。ホームヘルプなどのサービスを利用しながら10年間一人暮らしを続けてきた(現在はケアハウスに入居)。認知症本人の体験を伝えるための講演活動も行っている。認知症当事者の会「3つの会」代表、「日本認知症ワーキンググループ」共同代表。

「認知症になった私が伝えたいこと」
「認知症になった私が伝えたいこと」
佐藤雅彦、大月書店、2014
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